解離性障害

解離性障害

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解離性障害とは

解離性障害の「解離」とは、本来一つにまとまり繋がっている意識や記憶、知覚、アイデンティティ(自我同一性)が、一時的に失われた状態のことを言います。この状態になっている時は、意識や記憶、思考、感情、知覚、行動、身体イメージが分断されて体験されるのです。

たとえば、ある特定の記憶が一時的になくなり気づいたら違う場所にいたという現象や、自分から意識だけが抜け出して離れた場所から自分を見ていると感じる現象などがあります。

誰にでも一過性にみられる解離現象もあり、特に子どもの心の防衛反応として「解離」が働くことが多くみられます。これらは自然に治まる一過性の症状のため、治療を必要とはしません。しかし、何かしらの原因によって心が破綻した状態になった時にみられる「解離」は、治療が必要となるでしょう。

このように、「解離」という現象は、正常解離といって健常者にも現れることがある症状で、どのように症状が出るのか、重症度、持続期間などは様々です。しかし、解離によって社会生活や日常生活が難しくなり、対人関係が築けないほどの重症度であれば、その人の生活に深刻な障害をきたすことになります。そして、このような場合を「解離性障害」と言います。 

解離性障害の原因とは

解離が起きる病態のメカニズムは未だに解明されていませんが、主な要因としては、心的外傷体験によるストレス障害、幼少期の養育者との愛着問題、解離が生じやすい元々の素質などが挙げられます。

アメリカ、カナダ、欧州では、解離性障害をもつ人の約9割が幼少期にひどい虐待やネグレクトを受けていたと言われています。そして虐待だけではなく、大切な人との死別や離別、重い病気など、人生に多大な影響を与える出来事を経験した人が解離性障害を発病しやすいと考えられています。

さらには現在の患者さんが抱えているストレスの程度によって、発病に少なからず影響を与えているとも言われています。

心的外傷経験には、災害、事故、暴行などの一過性の出来事や、虐待や監禁、戦闘体験などの繰り返し経験してきた出来事もあります。このような辛い出来事により、精神面において深刻なダメージが加わることを避けようとして、防衛反応として自己を切り離す「解離」という状態を作り出すのです。

特に幼少期に虐待を受けていた人は、解離性障害になりやすいでしょう。虐待者が親や養育者であった場合、重症度は高まります。虐待を受けていた幼少期、子どもは生きていく上で経験する様々な意識、知覚、記憶、感情などを隔離し、自分の殻に引きこもることで、虐待を回避する術を身につけるものです。その過程で、別の人格が形成されることもあります。

 

解離性障害の症状や特徴

解離性障害には、個人によって異なる様々な症状があり、解離性同一性障害、解離性健忘、離人感・現実感消失障害などに分類されることが多いです。世界保健機構のICD-10などでは、次のような症状・特徴があるとされています。

主な症状

解離性健忘、解離性とん走、解離性同一性障害、離人症性障害、解離性昏迷

その他の症状

解離性運動障害、解離性けいれん、解離性知覚麻痺・知覚脱失、解離性転換障害、失立、心因性振戦、心因性失声、心因性難聴、ガンサー症候群、心因性錯乱状態など

ここでは、主な5つの症状について詳しく紹介していきます。

解離性健忘

強い心的ストレスをきっかけに、自分に起こった出来事の記憶をなくし、想起が不可能になった状態のことを言います。多くは数日のうちに記憶が戻りますが、ときには長期にわたって健忘が持続している場合もあります。

解離性とん走

自分が誰かという感覚(アイデンティティ)が失われ、突然家庭や職場などの日常的な場所から失踪して新しい生活を始めていたり、ふいに帰ってきたりする状態のことを言います。失踪している間の自分の行動についての記憶はありません。

解離性同一性障害

一般的に「多重人格」と呼ばれるものです。明確に区別できる複数の人格が同一人に存在しており、それらの人格が本人の行動を統制し交代で現れます。ある人格が現れているときは、他の人格は記憶がないことが多く、身に覚えのない出来事が起きるといった生活への支障を来します。

離人症性障害

自分が自分であるという感覚、意識が障害されてしまい、自分の姿を外から眺めているように感じる状態のことを言います。自己が分離し、二重化しているために起きる状態だと考えられています。

解離性昏迷

急に、身体を動かことや言葉を交わすことができなくなる状態のことを言います。随意運動、発語、光・音・接触に対する正常な反応が弱くなったり消失したりします。しかしながら筋緊張は正常で、静止姿勢や呼吸機能はそのまま正常な状態です。

解離性障害の診断

DSM-IV-TR(2000)によると、解離性障害は「意識、記憶、同一性、または知覚についての通常はよく統合されている機能の破綻」と定義されています。さらに①解離性健忘、②解離性とん走、③解離性同一性障害、④離人症性障害、⑤特定不能の解離性障害に下位分類されています。

しかしながら、自分が解離症状があるということに気づかない患者さんも多く、他の心身症状を抱えていることもあります。そのため、統合失調症などの他疾患との鑑別が必要になり、解離性障害を確定診断することが難しいケースがあるでしょう。

解離性障害は、心的外傷後ストレス障害やうつ病、境界性パーソナリティー障害、摂食障害、アルコールや薬物依存症の場合は、他の精神疾患も合併していることも多い疾患です。よって診断を行う際は、詳細な精神医学的な面接を行うとともに、他の精神疾患の可能性を否定することが重要です。

解離性障害の診断では、特に精神科医による面接が大切になります。ときには長時間にわたって、繰り返して面接を行います。健忘や別人格が形成されている場合は、受診と受診の間で日誌をつけるよう指導することがあります。また、医師が別人格との直接接触を試みることもあり、解離性障害を確定診断するまで時間がかかる場合は多いでしょう。

解離性障害の治療法

解離性障害の治療法として、推奨されているのは心理療法です。別人格が形成されている場合は人格を元の1つに戻すために治療を行いますが、すぐに症状が改善するわけではありません。

まずは患者さんと精神療法家との間に、良好な信頼関係を築くことが重要になります。その上で、現れた複数の人格に対してアプローチをしたり、トラウマ体験の記憶の対処方法を教えたりすることで、効果が期待できると言われています。

また、解離性障害に対して医療保険の適応となっている治療薬はありません。解離を生じさせる心的外傷後ストレス障害に対して、SSRIなどの薬剤が使用されることはありますが、すべての患者さんに適応するとは限らないのです。抗精神疾患薬の中には、患者さんの持つ症状の種類や重症度によって、衝動が抑えられないという逆効果を示す薬剤もあります。

よって、解離性障害の治療は時間をかけて患者さんと関わり合いを持ち、気長に症状が回復するために心理療法を続けていくことが大切でしょう。

解離性障害の患者さんを持つご家族・周囲の方ができること

解離性障害の患者さんは、自分の解離症状に気付いていない場合があります。その結果、身に覚えがないトラブルに巻き込まれることもあるでしょう。そして自分や他人に対して警戒し、社会生活から遠ざかろうとします。

この状態が続くと他の精神疾患を合併する恐れもあるため、ご家族や周囲の方のサポートが必要になります。具体的にお話すると、次のような点です。

  • まずは「解離性障害」「解離症状」について理解する
  • 大きなプレッシャーを本人に与えない
  • 患者さんと社会の接点が失われないようにサポートする
  • グラウディングにより五感を使い、現実感をとり戻す方法

解離性障害の患者さんはランダムに出現する解離症状により、他人との約束が守れない、人前で症状が出るのを避けるために人と関わらなくなる、といった辛い毎日を送っていることでしょう。周りの人は病気について正しく理解し、社会生活と再び関わり合いが持てるようになるまで、気長にサポートすることが大切なのです。